菊池 雅洋氏コラム〈3/3〉

- 菊地 雅洋(きくち まさひろ)氏
北海道介護福祉道場あかい花代表
社会福祉士、介護支援専門員等の資格を保有し、『人を語らずして介護を語るな』シリーズ等の著者として知られる。
あかい花介護オフィスCEO
そのほか多数の著書を出版しており、最新の「きみの介護に根拠はあるか~本物の科学的介護とは」も人気が高い。
ブログで介護関係の最新情報や持論を公開しており閲覧者数が多数。
介護職が得ておくべき知識
看取り介護を行う際に、介護職員であっても終末期に起こる身体の変化を予測しておくことは重要であり、事前にそうした知識を得る教育は受けておかねばならない。
例えば死の直前に必ず現れる状態の一つに、「下顎呼吸」がある。これは酸素の取り込みが少なくなることで、顎と喉の筋肉を動かして酸素を取り込もうとする呼吸状態で、あえぐような呼吸状態になる。
そのため下顎呼吸を一度も見たことがない人は、その状態を苦しんでいる状態と考え、なぜ酸素吸入をしないのかと疑問を持つ場合がある。しかし下顎呼吸状態のときは、酸素の取り込みが少なくなって体内の二酸化炭素濃度が上がるために、脳からエンドルフィンという麻薬物質が出て、下顎呼吸を行っている当事者は恍惚状態になる。つまり苦しくはないわけである。この時に酸素を入れてしまえば、体内の二酸化炭素濃度が下がり、エンドルフィンが出なくなるので、逆に対象者を苦しませることになる。
だから死を直前にして下顎呼吸に陥っている人に対し酸素吸入することはない。この時、間違ってはならないことは、下顎呼吸は意識が無い状態だから苦しまないという意味ではないということだ。あくまでエンドルフィンの生成によって恍惚状態になって苦しくならないのであり、酸素吸入しても意識は戻らないが、恍惚状態ではなくなり苦しんでしまう。