井口健一郎氏コラム〈3/3〉
- 井口健一郎(いぐちけんいちろう)氏
社会福祉法人小田原福祉会 理事
大学院卒業後、小学校教員を経て、2009年社会福祉法人小田原福祉会に入職。
特別養護老人ホーム潤生園 施設長
大学での非常勤講師や学会での理事を務める傍ら、FMおだわらでは介護にかかわる様々な疑問・お悩みを実例に基づいた回答とアドバイスをする「市民を介護で困らせない ミンナの介護」のパーソナリティも務め、社会貢献活動にも勢力を注いでいる。
WOWOWドラマ「正体」では介護監修者として介護指導に携わる。
2040年に向けて
我々はどういう時代を生きているのだろうか。
私たちは2040年に向かって何を準備すればいいのか。私は最近、常にこの問いを持っている。
介護現場をはじめ、あらゆる産業は超高齢化社会へのシフト、高齢化がピークを迎える2040年にそっとシフトしていっている。少し前に経済産業省若手プロジェクトがまとめた『不安な個人、立ちすくむ国家』が話題となった。(現在は文芸春秋で書籍化されている。*1))同報告書は、官公庁の職員がデータから導き出したものであり、その内容には目を見張るものがある。
内容としては「今の社会システムは高度経済成長期(1960年代の日本社会を前提)に作られたもので、組織中心社会(権威が規律)から個人中心社会(個人の決断やリスクテイクに依存する部分の増大)へと変化し、型に依存せず、自由だが不安な時代」と紹介している。
かつて、人生には目指すべきモデルがあり、自然と人生設計が出来ていたが、今は何をやったら「合格」「100点」か分からない中で、人生100年、自分の生き方を自分で生きなくてはならない時代になっていると指摘している。男女それぞれ100名を例に、令和の時代と昭和を比べると、昭和の標準的人生で結婚して出産して遂げるという生き方をはじめとする家族コンプリートが81%から58%に減少し、定年まで働き上げるという仕事コンプリートが34%から21%に減少している。また、高齢者は働く場、居場所がなく、若者は活躍の場がない。また現役世代には保障が薄いと言うのも、日本社会の特徴である。そして日本の社会保障制度は、年齢によって区切られていることが多い。